EDPとは、欧州デジタルプレス協会(European Digital Press Association)の略称で、ヨーロッパのデジタル印刷業界紙の出版社が加盟しています。EDP Awardsは、デジタル印刷業界の革新的な製品に授与される賞です。
ミマキが受賞した製品は、UVインクジェットプリンタのUJV100-160Plusと、DTFプリンタのTxFシリーズ(TxF150-75とTxF300-75)です。この記事では、EDP Awards 2024を受賞したこれらの3モデルを紹介します。
なお、ミマキは正式な社名をミマキエンジニアリングと言います。同社は産業用インクジェットプリンタやカッティングプロッタ、インクなどの開発、製造、販売、保守サービスを一貫して行っています。
UVインクジェットプリンタとDTFプリンタ
今回ご紹介するプリンタは、ごく一般的な紙に印刷するタイプのプリンタではなく、産業用のやや特殊なプリンタです。「UVインクジェットプリンタ」と「DTFプリンタ」は、いったいどんなものなのでしょうか?
UVインクジェットプリンタとは
UVインクジェットプリンタは、UV(紫外線)で硬化する成分を含んだインクを使用するプリンタです。アクリルやプラスチック、木材、金属といったさまざまな素材に印刷ができます。小ロット多品種の生産が可能で、屋外広告やグッズの作成などに幅広く使用されています。
UVインクは瞬時に硬化するため、溶剤インクを使用するプリンタのように、乾燥を待つ必要がありません。後加工に直ぐに取り掛かれるメリットがあります。
DTFプリンタとは
DTFプリンタは、生地や布に印刷できるプリンタです。Tシャツなどの衣類に印刷するために使われるインクジェットプリンタには、ガーメントプリンタ、DTFプリンタ、昇華転写プリンタの3種があります。
ガーメントプリンタは、DTGプリンタとも呼ばれます。DTGは、Direct to Garmentの略で、Garmentは衣服の意味です。インクを直接衣類に吹き付けて印刷します。
DTFプリンタは、Direct To Filmの略です。一旦フィルムに印刷して転写シートを作成、転写シートをヒートプレスして衣類に定着させることで印刷します。
昇華転写プリンタは、昇華転写インクを転写紙に印刷、昇華転写インクを熱転写することで印刷します。
この3種の中でも、DTFプリンタは、幅広い素材に対応し、有色の生地にも印刷が可能、小ロット多品種の生産に適しているという特徴があります。
EDP Awards 2024を受賞したUJV100-160PlusとTxFシリーズ2機種
従来機に3つの機能をプラスした「UJV100-160Plus」
UJV100-160Plusは、従来機のUJV100-160に3つの機能をプラスした製品です。UVプリンタのエントリーモデルとして位置づけられています。
UJV100-160Plusの特徴
●インクセーブ機能でランニングコストを低減
UJV100-160Plusには、カラーバランスを保ったままインク消費量を削減するインクセーブ機能が搭載されています。データによっては粒状感が目立つ場合もありますが、最大で約50%までインクを減らせるので、ランニングコストを低減できます。
●引き戻し印刷で最大3層の印刷が可能
UJV100-160Plusには、一度プリントしたメディアを引き戻して重ねて印刷する引き戻し印刷機能が搭載されています。カラー、白、カラーと3層に印刷することで、昼光でも後方光源でも見やすい電飾看板を印刷したり、クリアの層を重ねることですりガラス調の表現をしたりと、付加価値の高い印刷が可能です。
●同社のカッティングプロッタと連動し作業効率がアップ
ラベルやステッカーを印刷する場合、従来機では、別にカッティング専用のソフトウェアからカットデータを出力する必要がありました。UJV100-160Plusでは、プリント出力ソフトウェア「RasterLink7」にてカットデータの出力が可能になりました。カッティングプロッタとシームレスに連動することで、オペレーターの作業効率が上がります。
●誰にでも安定して高画質のプリントが可能なサポート機能
従来機UJV100-160から引き継がれた機能として、充実したサポート機能があります。ドット位置やフィード(送り)量を自動調節する機能やノズル抜けを自動検知して復旧する機能などです。オペレーターの調節によるバラツキもなく、安定したプリントが行えます。
UJV100-160Plusの仕様
●標準価格
222万4200円
●対応インクボトル
LUS17-C-BA LUS-170 UV硬化インク1Lボトル シアン
LUS17-M-BA LUS-170 UV硬化インク1Lボトル マゼンタ
LUS17-Y-BA LUS-170 UV硬化インク1Lボトル イエロー
LUS17-K-BA LUS-170 UV硬化インク1Lボトル ブラック
LUS17-W-BA LUS-170 UV硬化インク1Lボトル ホワイト
LUS17-CL-BA LUS-170 UV硬化インク1Lボトル クリア
※各色2万7830円
安定して稼働するDTFプリンタ「TxFシリーズ」
TxFシリーズは、インクの吐出不良や白インクの詰まりというようなDTFプリンタの問題点を改善し、安定稼働を実現したプリンタです。EDP Awards 2024を受賞したTxF150-75とTxF300-75の2つの製品は、印刷スピードこそ異なりますが、その他の性能は基本的に同等です。
TxFシリーズの特徴
●安定稼働を実現する技術NCUとNRSを搭載
TxFシリーズには、NCU(Nozzle Check Unit)とNRS(Nozzle Recovery System)が搭載されています。NCUによりノズル抜けがないかをチェック、ノズル抜けを発見したらNRSによりのノズル抜けを解消します。ノズルに問題が生じてもプリント作業が止まらず、サービスマンの修理を待つ必要なく生産を継続できます。
●白インクを定期的に循環させてトラブルを防ぐMCTv2
MCTは、Mimaki Circulation Technologyの略で、沈殿してトラブルの元になる白インクの印刷経路全体をポンプで循環させる技術です。MCTによって、安定した白インクの吐出が可能になり、頻繁にノズルクリーニングを行う必要がなくなります。また、白インクを含む各色のインクに脱気済みアルミパックインク方式を採用することで、インクへの気体混入を抑えてノズル詰まりを低減しています。
●環境負荷を低減したインクを採用
TxFシリーズに採用されているインクは、エコテックス国際共同体が定めるECO PASSPORT(エコパスポート)認証を取得済みで、環境負荷が小さく安全性の証明がなされています。
●生産性が約300%向上したTxF300-75
機能の多くが共通するTxF150-75とTxF300-75ですが、TXF300-75はプリントヘッドが2つあり、生産性が大幅にアップしています。LサイズのTシャツをプリントした場合、TxF150-75が毎時22枚の印刷が可能であるのに対して、TxF300-75は毎時66枚を印刷できます。
TxF300-75は海外展開しているモデルで、日本国内では入手先が限られますが、生産性を重視するなら魅力的な製品です。
TxFシリーズの仕様
●標準価格
143万円
●対応インクパック
PHT50-C-60 PHT50 熱転写顔料インクパック シアン
PHT50-M-60 PHT50 熱転写顔料インクパック マゼンタ
PHT50-Y-60 PHT50 熱転写顔料インクパック イエロー
PHT50-K-60 PHT50 熱転写顔料インクパック ブラック
PHT50-W-50 PHT50 熱転写顔料インクパック ホワイト
※各色9900円
EDP Awards 2024受賞プリンタの3機種のスペック表
製品名 | UJV100-160Plus | TxF150-75 | TxF300-75 |
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メーカー | ミマキ | ミマキ | ミマキ |
発売年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 |
標準価格 | 222万4200円 | 143万円 | ― |
本体サイズ (幅×奥行×高さmm) |
2775×700×1475 | 1965×700×1392 | 1965×700×1392 |
印刷解像度 |
360dpi、720dpi、900dpi、1200dpi | 720dpi、1440dpi | 720dpi、1440dpi |
最大作図範囲 | 1610mm | 800mm | 800mm |
メディア最大幅 | 1620mm | 810mm | 810mm |
メディア厚さ | 1.0mm以下 | 1.0mm以下 | 1.0mm以下 |
ロール外径 | 250mm以下 | ― | ― |
ロール重量 | ― | 45kg以下 | 45kg以下 |
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EDP Awards 2024を受賞した、ミマキのプリンタを紹介しました。UVプリンタとDTFプリンタの異なる種類のプリンタですが、ともに革新的な製品として高い評価を受けています。
広告業界やウェアプリント業界の方で、プリンタの新規導入や買い替えを検討されている方は、この記事を参考にしてください。
なお、松本洋紙店では、インクジェット用紙やレーザープリンタ用紙の全国配送を承っております。ロール紙や特殊紙も幅広く取りあつかっているので、紙に関するお悩みは松本洋紙店にご相談ください。さまざまなタイプの用紙のサンプルも用意しています。