紙のコラム

【紙の可能性】鉄やコンクリートの代わりに!? 紙の建築家・坂茂氏の紙建築を学ぶ【紙管で造る】

坂茂の紙建築

「建築に紙を使う」と言われれば、ふつうに思いうかぶのは壁紙や襖などではないでしょうか。しかし、“紙の建築家”として知られる坂茂(ばん しげる)氏の建築物は、建材がまさに紙なのです。坂氏のデザインを見ると、とても紙でできたとは思えないほどの、その素敵な外観に目を奪われます。

この記事では、紙の建築家・坂茂氏の手による、世にもめずらしい紙を使った建築物をご紹介します。

坂茂とは? その経歴や建築の実績を知る

東京生まれの坂氏は、中学生時代に建築家を志し、19歳で渡米。その後、南カリフォルニア建築大学で建築を学び、クーパーユニオン建築学部を卒業しました。

坂氏の名が知れ渡ったのは、1995年に起きた阪神・淡路大震災後。仮設住宅として紙のログハウスなどを制作し、注目を集めました。その後も、海外の災害で被災した地域にも仮設住宅等の建設を行っています。2011年には、地震で被害を受けたクライストチャーチ大聖堂の紙による仮設教会の建築も提案しました。

国内外で住宅や教会、万博の展示館など、紙管(しかん)を使ったさまざまな建築物を設計した坂氏の業績は、世界的に高く評価されています。フランス芸術文化勲章オフィシェ受章、プリツカ―賞、朝日賞、紫綬褒章、マザー・テレサ社会正義賞など、数多くの受賞歴からもそれはうかがい知れるでしょう。

紙の建築を担う“紙管”とは?

紙の建築を担う紙管

建築材料が“紙”と聞くと、どうしてもノートや本、新聞紙などを想像しがちではないでしょうか。破れやすいうえに水に弱く、とても建築材料になるイメージはわきません。どうやって、一般的な建築材料である木材や鉄、コンクリートのような、固い素材の代わりになっているのでしょうか。

その秘密は、前述した“紙管”にあります。身近なところでは、トイレットペーパーやラップの芯に使われているものです。

紙は現在のところ、建築の構造材としては認められていません。紙管を構造材として建築に使うには、強度実験をして建築基準法第38条の認定を取る必要がありました。そこで坂氏は紙管を使って「紙の家」を設計し、さまざまな実験を行ってデータを取りってその認定を取ることに成功しました。

坂氏による紙を使った建築作品

坂氏の手がけた紙の建築物は、日本だけでなく海外でも作られています。その作品の一部をご紹介します。

クライストチャーチ大聖堂(ニュージーランド)

クライストチャーチ大聖堂

クライストチャーチ大聖堂は、2011年地震によって半壊する被害に遭いました。坂氏は仮設のカテドラルを、現地調達できる紙管やコンテナを用いて設計。三角形のステンドグラスが印象的な建物を造りました。

ペーパードーム台湾(台湾)

ペーパードーム台湾
阪神・淡路大震災で被災した教会のために、坂氏は紙の教会を建てました。その後、1999年に台湾大地震で埔里が被災すると、この紙の教会が移築されました。現在は教会兼コミュニティセンターとして利用されています。

ハノーバー国際博覧会日本館(ドイツ)

坂氏が設計した、ハノーバー国際博覧会の日本館です。万博閉会後に解体されるパビリオンが、環境負担にならないような材料・構造を考えて設計されています。

「生産するときの長さに制限がない」という紙管の特性を利用した、ジョイントの少ないグリッドシェル状の紙管アーチが用いられました。トンネルアーチの長さは、およそ74m、高さ16mほどになります。

ラクイラ仮設音楽ホール(イタリア)

2009年に発生したイタリア北東部の地震で、ラクイラ市が被害を受けました。日本政府が音楽の街として知られるラクイラへの復興を支援するために建築した、紙による仮設のコンサートホールは坂氏の手によるものです。

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紙の特性を活かして作られた坂氏の建築物は、環境への配慮だけでなく、その美しさにも目を奪われるものばかりです。世界規模で原材料価格の高騰が叫ばれ、また環境問題も注目されるなか、坂氏の活躍と“紙”が持つ可能性に、ぜひ注目してみてください。

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