こんにちは、松本洋紙店スタッフです。
多業種にわたる松本洋紙店のお客さまから、今回は
アマチュア写真家 杉江輝美さまにご協力をいただきお話をお聞きしました。
数々の賞を受賞されており、2023年にはニコンプラザ大阪The Galleryにて展覧会も開催されました。
今回は貴重なお写真をなんと8点、掲載させていただきました。ぜひご覧くださいませ。
Q:プロフィールをお教えください
今で言う山ガールだった若い頃、山の景色や高山植物をカメラに収めていました。プロが撮影したくっきり浮かび上がった花の写真と自分の撮ったものとぜんぜん違う。なぜだろう、その疑問が写真の世界に入る一歩になりました。
地元明石の写真教室の先生との出会いもよかったんだと思います。1994年4月くらいから通い始め、先生のお勧めで買ったPENTAXの一眼レフで北海道に両親と行って撮影したり。そんな中、1995年1月9日にたまたま撮ったのが阪神大震災の地震雲。その場にいなければ撮れないその面白さ、初心者でも男女年齢関係なく認めてもらえる面白さ、そこからはまって30年ほどが経ちました。
略歴
2008年10月「こざる物語」写真展 ニコンサロンbis大阪
2009年5月 「こざる物語」写真展 ニコンサロンbis新宿
2011年11月 第59回ニッコールフォトコンテスト 第1部ニッコール大賞 長岡賞 受賞
2018年5月 「海岸物語」写真展 ニコンサロンbis大阪
<所属写真クラブ>
神戸光影会
写団ひまわり
ニッコールクラブ阪神支部
Q:写真の前はテニスをされてらっしゃったとか
テニスと写真には共通点があると思うんです。バレーボールなどとは違い、基本ひとりの競技です。もちろん対戦相手がいないと成立しないしダブルスならペアを組むのですが、バレーボールのようにそれぞれ役割があって、というような団体のスポーツではありません。
写真もひとり遊び。みんなで撮影に行ったとしても、撮るのはひとり。昔はフィルムだったので現像は写真屋さんにお願いしていましたが、今はもうデジタル。調整して印刷まですべてひとり、自己責任です。勝手気ままにできる。その上、写真は初心者であっても評価してもらうことができる。テニスは15、6年続けていましたが、写真と出会ってやめました。
Q:今回の作品についてお聞かせください
「すなば物語」と題した写真展で発表した作品のうち8枚を選びました。子供の笑顔ややんちゃなところをテーマにした展覧会でしたので、皆さん楽しんで気持ちよく見ていただけたかなと思っています。
実は2011年にニッコール大賞 長岡賞を受賞した際の宿題だったんです。ニッコール
クラブの顧問の先生方から砂丘をテーマに個展開催するようにと。前の「海岸物語」で子供だけでの作品制作のご指導を受けて、やっと去年、宿題が終わったというところです。
作品1:登る女子
女の子が砂丘を登ってきたのでカメラを手に取りました。動きのある写真を撮りたいので基本、連写で撮影しています。
作品2:大顔兄弟
この子達は兄弟なのですが、片方を撮っていたらもう片方が気づいて飛び込んできたところです。子供の予想もつかない動きを捉えることができました。
作品3:駆け下りる
逆光で撮影しています。砂ってカラーで見ると影が汚く見えるんです。モノクロだとずいぶん印象が変わります。
作品4:風の二人
風が吹くと動きが出てよい写真を撮ることができることが多いです。子供たちとの関係作りはやはり、孫が4人いることも大きいですね。
作品5:ピッタリ3人
親御さんが3人の写真を撮っていたところに声をかけました。最初はポーズをとっていたのですが、自然とピッタリくっついて。
作品6:走る
たまたま前を走り抜けていったところを撮りました。連写した中から選んだ作品です。
作品7:水に座る
ここはオアシスなんです。地下水が湧き出てできた池で、冬の積雪量によって消えたり残ったりします。この夏はまだ残っていて水遊びができました。
作品8:砂遊び
この作品が気に入って、写真展のタイトルを「すなば物語」とつけました。滋賀からお父さんと来た姉妹、背景がよいところで砂遊びを続けてもらって撮影しました。
Q:子供たちの表情がとても生き生きしていますね
子供たちのよい表情を撮ろうと思うと親御さんとの信頼関係が必須です。親御さんが心を許してくれたら子供たちも、このおばちゃんなら心許してOKと思ってくれます。撮っている人の影を感じさせない写真になるのが一番。そのためには子供たちがリラックスして素顔を見せてくれないと。周りのみんなからは「口で撮ってる」とか「人たらし」なんて言われることもあるんですよ。
写真って95%運だと思うんです。そもそもその場に行かないと撮れないし、よい人とめぐり合ってやっと撮ることができる。なので基本、楽しければよい、と思っています。見ず知らずの方とカメラを持っていたらお話することができる。写真撮らせてくださいの一言から始まるかかわりがあります。まさに一期一会。
人を撮るのはでも、最近難しくなっています。先日、高校生の展覧会を見て顧問の先生と話したのですが、見ず知らずの人を撮るのは今、とても難しいと。撮影の許可を取り、さらにそれを作品として展示する許可を取る必要があります。肖像権のことなど、なかなか厳しい昨今。わたしはよい時代に写真を撮っていられたのかもしれません。とはいえ、若い子達に撮影を頼まれていやだという人はまあいないでしょう。乗り越える問題は多くてもぜひ、見ず知らずの人に声をかけて、多くの人と交わりながら撮影する楽しみを知ってもらいたいと思っています。
Q:今後の作品作りについてお聞かせください
個展は去年の「すなば物語」で一区切りと思っています。ニッコールクラブ会報誌のコンテストや、自分に合ったテーマのコンテストに応募したり、何かの形で表現をして、自分の励みにしたいです。仲間との撮影会や切磋琢磨する例会で、友人からのアドバイスも大切にしています。作品に仕上げるのは人をテーマが多いですが、コロナ以降、鳥の撮影も楽しんでいます。
Q:カメラや紙、プリンターへのこだわりはありますか
カメラは古い作品はニコンD70からD300を使っています。最近はD500です。すぐにピ
ントが合って動きにも対応してくれる良いカメラです。
プリンタはEPSONのPX-5002をマット紙専用で使っています。A2まで印刷できます。
実はこのプリンタはいただきものなんですよ。新しいものを買うからとくださる方があっ
て、もらってすぐ故障してしまったのを直して使っています。PX5VIIも持っていますが
そちらは光沢のある紙用に使っています。
松本洋紙店スタッフより
杉江様の作品の中で輝くたくさんの子供たちを見るにつけ、幸せな気持ちになります。自分が子供だった頃、こんな風に撮ってもらえたら。そもそも初めて会った人に生き生きとした表情を見せられただろうか。これはきっと杉江様が一瞬にして相手を安心させるマジックの持ち主だからに違いない。
「すなば物語」にて、泣いているお子さんの作品を見て60代くらいの男性が、昔お兄ちゃんにいじめられて泣いていた頃を思い出すからこの作品は嫌いや、とおっしゃったそうです。60代の男性を子供に戻してしまう。まさに撮影者の影を消しているから、私心なしに撮影してらっしゃるからこそ、そのパワーが出るんだなと思いました。今後はぜひ、今の若い人たちにも、一期一会、見ず知らずの人を撮る楽しみ、撮る醍醐味を受け継いで行っていただきたいです。展覧会は最後なんておっしゃらず、ぜひもう一度!です。