家庭用インクジェットプリンターを選ぶとき、必ずといっていいほど目にするのが、キヤノンとエプソンです。しかし、プリンターに詳しくないと、2つのメーカーがどう違うか、わからないのではないでしょうか。
そこで今回は、キヤノンとエプソンの特徴を紹介し、どんな用途に向いているのかを解説していきます! プリンター選びに迷っている方はぜひ参考にしてくださいね。
カメラ製造から事務機器製造へ多様化したキヤノン
キヤノンは、1933年に「精機光学研究所」という名前で、カメラ製造からスタートした企業です。その後、事業が多角化し、1969年に社名を「キヤノン株式会社」に変更。FAXやコピー機、プリンターなどの事務機器も製造するようになりました。
1990年には、当時は20万円くらいする業務用プリンターばかりだったなか、一般家庭向けのバブルジェット方式ノート型プリンター「BJ-10v」を発売。以降、プリンターはキヤノンの主力商品となっていきました。
ちなみに、キヤノンは英字表記だとCanonと書き「キャノン」と発音しますが、なぜカタカナ表記では「キヤノン」と「ヤ」を大きく書きます。その理由は、カタカナで表記したときの見た目のバランスを整えるためなのだそうです。
そんなキヤノンのプリンターは、こんな特徴があります。
キヤノンの特徴① 全機種にハイブリッドインク採用
キヤノンは「文書印刷に強い」とよく言われます。創業当初はカメラ製造から始まったことを考えると、いま文書に強いと言われるメーカーになっているのは、ちょっと不思議な気もしますね。これは、のちにコピー機などの事務機器にも力を入れるようになった経緯が一因になっているようです。
2021年11月現在、キヤノンで販売されている現行の家庭用インクジェットプリンターは、モノクロ専用機以外すべての機種に染料・顔料両方を使った「ハイブリッドインク」が搭載されています。
「染料」「顔料」は、インクの種類のこと。染料インクは、用紙に染み込んで色をつけるインクです。発色が鮮やかで、印刷面はなめらか。光沢紙に印刷しても艷やかに仕上がるため、「写真印刷向き」と言われています。対して、顔料インクは、紙に染み込まず表面に定着するのが特徴。くっきりと発色し速乾性が高く、「文書印刷向き」と言われています。
つまり「ハイブリッドインク」とは、写真に強い染料インクと文書印刷に強い顔料インクの両方を搭載し、用途に応じて使い分けられる製品なのです。キヤノンは「文書に強い」と言われていますが、実際は写真を印刷するときは染料で鮮やかに、文書を印刷するときは顔料でくっきり見やすくと、実際は両方を綺麗に仕上げるスペックを持っています。
キヤノンの特徴② スタイリッシュなデザイン
キヤノンのプリンターは、直線的でスタイリッシュなデザインが多いのも特徴です。カラーバリエーションを多く用意している機種もあり、部屋に合う色を選べます。
例として、ここでキヤノン2021年最新モデルのデザインをご紹介しましょう。
【参考】
Canon PIXUS TS8530 | コンパクトデザイン
PIXUS TS8530は、ブラック、ホワイト、レッドの3色展開。天面には光の加減で陰影が変化するテクスチャーが採用されていて、さまざまなインテリアに合わせやすいデザインになっています。
【参考】
Canon PIXUS TS7530 | カジュアルデザイン
PIXUS TS7530は、オーソドックスなブラック、ホワイトに加えてクールなブルーも用意されています。直線的なデザインが多いなか、こちらは角に丸みがあってカジュアルな印象です。ボタンも角が丸まったデザインになっていて、統一感があります。
キヤノンの特徴③ 背面トレイで最大100枚給紙可能
キヤノンは給紙方法にも特徴があります。
キヤノンのインクジェットプリンターは、本体内部に紙をセットする「カセット給紙」と、背面のトレイに紙を置く「背面給紙」の2つの給紙方法を採用している機種が多くあります。カセット給紙は、用紙を設置しながら保管の役割も兼ね備えられることと、背面にトレイが出ない分、設置スペースが少なく済むことがメリット。背面給紙は、内部にセットできないサイズや、厚い紙など多様な用紙に対応できます。
ほかのメーカーも両方の給紙方法を採用している機種は多くあるのですが、キヤノンの機種は設置可能な枚数に特徴があります。キヤノンは最大100枚まで背面トレイに設置可能で、複数枚印刷するときでも1枚ずつ手差しする必要がありません。これは特殊な用紙を多く使う機会が頻繁にある人には、うれしい仕様ですね。
時計製造からプリンターメーカーへ派生したエプソン
エプソンの前身となる有限会社大和工業が設立したのは1942年。当時は腕時計の部品製造や組み立てを行う会社でした。時計作りから派生する形で、半導体やプリンターなどの開発も進めら、1968年には“エプソン”の名前の由来となる世界初の小型軽量デジタルプリンター「EP-101」を製作。子会社の設立や合併を経て、セイコーエプソン株式会社となりました。
1996年には、プリンターの用途は文字印刷が主流だったなか、写真画質を超えた6色インク採用のカラーインクジェットプリンターを開発し、業界に衝撃を与えました。それ以降も、2004年に写真専用小型プリンターのColorio me(カラリオ・ミー)を発売、2010年には大容量インクタンクシステム搭載インクジェットプリンター「L100/L200」を開発するなど、業界を牽引する存在となっていきました。
それでは、そんなエプソンの特徴を紹介していきましょう。
エプソンの特徴① 写真高画質プリンターを多数ラインナップ
前述したようにエプソンは、写真を印刷できるほど画質の高いプリンターを初めて作った会社です。そのため、文書に強いキヤノンに対して、エプソンは写真に強いと言われています。
インクジェットプリンターの色は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色が基本となりますが、エプソンの家庭用プリンターの現行機種では、染料6色インクを採用しているものが5機種あります。基本の4色にライトマゼンタとライトシアンを加えることで、素肌や空の色など、色調豊かな表現を可能にしています。
さらに、エプソンは家庭用プリンターとは別に、写真高画質プリンターを6機種用意。「深い黒を表したい」「何枚も印刷して色の出方を確かめたい」など、表現したい色合いや使い方に合わせて最適な機種を選べます。
また、エプソンの公式サイトでは「フォトポータル」のページを用意。プロの写真家に聞いた撮影テクニックや展示の際に知っておきたい作品制作チェックリストなどを公開しています。ほかにも、オンラインセミナーを開催して写真の編集方法やプリンターの使いこなし方を説明するなど、さまざまな方法で作品作りを応援しています。
エプソンの特徴② 大容量インクの「エコタンク」
エプソンのもうひとつの特徴は、「エコタンク」です。一般的なプリンターは、インクがなくなったらカートリッジごと交換します。対してエコタンク採用プリンターは、インクがなくなったら専用のボトルをカートリッジに刺してインクを補充できるんです。キヤノンにも大容量インクタンク方式の「ギガタンク」がありますが、この方法を採用したのはエプソンの方が先。エプソンは、大容量インクタンクのパイオニアといえます。
エコタンク方式最大のメリットは、印刷コストが安く済むこと。たとえば、エプソンのカートリッジ方式プリンターEP-883AWとエコタンク方式のEW-M754TWを比較すると、EP-883AWはA4カラー文書1枚あたりのインク代が約13.2円なのに対して、EP-883AWは約3.0円で、その差は4倍以上。大量の印刷が必要でコストを抑えたいなら、エコタンクはうってつけですね。
エプソンの特徴③ 丸みを帯びた優しいデザイン
直線的なキヤノンに対して、エプソンの家庭用インクジェットプリンターは丸みを帯びた優しいデザインが多くなっています。色はホワイトが主流で、わずかですがホワイト・ブラックの2色で展開している機種もあります。
ここからは、エプソンの最新モデルのデザインを紹介しましょう。
こちらは、2021年10月に発売されたエコタンク搭載モデルのEW-M754TW/TB。真っ白でシンプルなデザインで、右側に配置された青いLEDライトが爽やかな印象です。写真はホワイトですが、色違いのブラックも用意されています。
白がメインの家庭用プリンターに対して、写真高画質プリンターは黒を基調とし、直線的なデザインです。
【参考】
Epson Proselection SC-PX1VL
こちらは、2020年9月に発売されたEpson Proselection SC-PX1VL。真っ黒で洗練されたデザインで、さすがプロ仕様と思わせるような高級感があります。
こんな人にはキヤノンorエプソンがおすすめ!
それぞれの特徴とおすすめの人をまとめると、以下のようになります。
【キヤノンがおすすめの人】
・メインは文書だが、写真も印刷したい人
・スタイリッシュなデザインが好きな人
・普通紙以外の紙をよく使う人
【エプソンがおすすめの人】
・写真印刷がメインの人
・コストを抑えて大量に印刷したい人
・丸みのあるデザインが好きな人
キヤノンかエプソンか迷った際には、自分がどちらに当てはまるか考えてみてください。この記事が、あなたのプリンター選びのお役に立てれば幸いです。