プリンターのインクには、CMYKといった色の違いのほかに、「染料インク」と「顔料インク」いった違いがあります。しかし、色と違ってこの2つの違いは、あまり意識せずに使っているのではないでしょうか?
じつは、この染料インクと顔料インク、性質も違えば、適した用途も異なるのです。とはいえ、この染料と顔料は好きに変更できるわけではなく、プリンターのモデルによってあらかじめ使えるものが決まっています(一部の多色プリンターは染料と顔料を選べるものもある)。この記事で染料と顔料の違いを学び、プリンター選びにも活かしてください!
染料インクと顔料インクの性質の違い
まず2種類のインクの基本的な違いについてご説明します。染料インクは、用紙に染み込むインクです。発色が良く、色鮮やかに印刷できます。用紙にインクが染み込むため、用紙の表面が平滑になり、写真用光沢紙に印刷すると光沢がキレイに出ます。
ただし、染料インクは、プリントした直後とインクが乾燥した後では、色が変わって見えるという欠点があります。ふつうはそこまで気にするほどでもないですが、カメラマンやイラストレーターのように、テストプリントと色調整を繰り返して、自分が表現したい色を追求する人にとっては大問題です。
一方、顔料インクは、用紙に染み込まずに表面で定着するインクです。用紙にインクが染み込まないため、にじみにくい特徴があります。保存性が高く、光や空気に触れることによる劣化が少ないのも顔料インクのメリットです。
欠点としては、用紙の表面が染料インクほど平滑にならないので、光沢のムラが出やすくなります。用紙の表面にインクが乗った状態なので、染料インクよりも、こすれやはがれに弱いのも欠点です。
それぞれのインクに適した用途と選び方
上で説明したようなインクの性質を踏まえると、それぞれのインクに適した用途が分かります。
まず染料インクは発色が良く、写真用紙に多い光沢紙との相性もバッチリなので、写真印刷に向いています。家庭用のプリンターは、写真印刷の鮮明さを重視して染料インクを搭載するプリンターが多いです。
一方、顔料インクは、印刷がにじみにくく、文字がくっきりと見やすくなります。染料インクよりも、文書の印刷に向いています。この特徴を活かし、ビジネス用のプリンターは顔料インクを採用するものが多くなっています。
また、このようなインクの特性を生かすために、プリンターの中には、写真印刷用に染料インク、文書印刷用にブラックのみ顔料インクを搭載している製品もあります。キヤノンのハイブリッドインク搭載機種は、このタイプです。
ここまで説明したように、染料=写真向き、顔料=文書向きが原則となりますが、その傾向から外れた製品もあります。じつは顔料インクには、高精細に色が表現でき、階調性に優れるという特徴もあります。そのため、エプソンやキヤノンのプロ仕様の高画質プリンターには、顔料インクを採用したものもあるのです。
さらに、顔料インクには、染料インクのような時間経過による色の変化もないうえに、保存性に優れる強みもあります。これらをふまえると、用途によっては顔料インクのほうが写真印刷に向いているとも言えそうです。
写真なのか、文書なのか。おもにどちらの印刷を目的とするかで、その用途に向いたインクの種類は違ってきます。染料と顔料のハイブリッドタイプ、あえて顔料インクを使った高画質プリンターなどもあるので、この記事の知識も参考にしながら、用途に合うインクを搭載したプリンターを選んでみましょう!