人間は古来より、動植物を言葉や絵で記録してきました。その自然描写の普及には、活字や版画などの印刷技術が大きな役割を果たしています。
「自然という書物」展では、15~19世紀における西洋のナチュラルヒストリー(自然誌、博物学)とアート(美術、技芸)のつながりに注目し、人間が表現してきた自然物のすがた・かたちを紹介する展覧会です。この記事では、その情報をご紹介します。
「自然という書物」展の展示内容は?
展示構成は第1章~第4章に分かれています。
第1章は「想像と現実のあわい―15、16世紀」。
中世ヨーロッパの自然観は「想像力」「書物からの知識」「神の存在」から成るものでした。15世紀からは自然の記述や描写が始まり、16世紀には学者と画家・版画家が協同して草本誌を刊行。動物も実際に見て記録される一方、寓意像としても多くの意味と役割を担い続けました。
第2章は「もっと近くで、さらに遠くへ―17、18世紀」。
17世紀には望遠鏡や顕微鏡が登場し、自然の細部まで目を向けられるようになりました。コロンブスの新大陸発見に始まる大航海時代を経て、記述や描写の対象となる自然の範囲が広がっていきます。自然に向ける視線が精緻になると同時に、書物に描かれる挿画も、木版画からより精緻に表現できる銅版画へと移行していきました。
第3章は「世界を分け、腑分け、分け入る―18、19世紀」。
18世紀に入ると記述・描写された自然を分解・解剖するようになり、動植物の分類体系の基礎となるリンネの『自然の体系』やビュフォンの『博物誌』が刊行されました。さらに新たな観測器具や画家を伴った探検家の世界周航、版画技法の発展により、さまざまな地域の自然物と自然環境の解像度が高まっていきます。
第4章は「デザイン、ピクチャレスク、ファンタジー」。
15~19世紀を通して、西洋では自然が多様な手法で描写されてきました。自然の造形を生かした「デザイン」、自然を絵画的に表現する「ピクチャレスク」、自然を霊感源とした「ファンタジー」をキーワードに、自然と美術のつながりを明らかにしていきます。
西洋の紙上に築かれてきた「ビオトープ」の世界を堪能しよう
「自然という書物」の展示概要は、以下の通りです。
会期:2023年3月18日(土)~5月21日(日)
[前期]3月18日(土)~4月16日(日)
[後期]4月18日(火)~5月21日(日)
※期間中、展示替えと書籍のページ替えがあります。
会場:町田市立国際版画美術館 企画展示室1・2
所在地:東京都町田市原町田4-28-1
開館時間:午前10時~午後5時(土日祝は午後5時30分まで)
※入場は閉館30分前まで
休館日:月曜日
入場料:一般900円、高校・大学生450円、中学生以下は無料
※初日3月18日と開館記念日4月19日は入場無料
※シルバーデーの3月22日と4月26日は65歳以上の入場無料
また、講演会も次の日程で開催されます。どちらも先着60名までで、本展観覧券(半券可)が必要です。
・2023年4月15日(土)14時~15時30分
講師:菅靖子(津田塾大学英語英文学科教授、デザイン史・日英デザイン交流史)
会場:講堂
・2023年5月13日(土)14時~15時30分
講師:桑木野幸司(大阪大学人文学研究科教授、西洋美術・建築・都市史)
会場:講堂
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展示期間中はスペシャルトークや、小学生が対象の絵本づくり講座も開催されます。お出かけ日和の春に、ぜひお立ち寄りくださいね!
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