「蔵書票」という言葉を、聞いたことはあるでしょうか?
耳慣れないこの言葉は、「ぞうしょひょう」と読み、別名で「エクスリブリス」とも呼ばれます。本の持ち主を示すために、本の見返しに貼られた小さな紙のことですが、現代ではなかなか見かけないのではないでしょうか。
蔵書票は15世紀にヨーロッパで誕生し、20世紀にかけて日本でも多くの芸術家が、おもに版画をもちいて作成してきました。現在では、実用性よりも芸術的な価値を評価されています。この記事では、そんな宝石のように色鮮やかで、魅力的な蔵書票を集めた展覧会の情報をお伝えします。
「蔵書票展」はどんなイベントなの?
今回、こちらの記事でご紹介する「書物を彩る蔵書票」展は、栃木県鹿沼市にある川上澄生美術館で開催されています。以下、イベントの概要です。
●会期:2022年4月9日(土)~9月4日(日)
●前期:4月9日(土)~6月26日(日)
●後期:6月29日(水)~9月4日(日)
●会場:鹿沼市立川上澄生美術館 2階展示ホール
●所在地:栃木県鹿沼市睦町287-14
●アクセス:
・JR日光線 鹿沼駅から徒歩20分
・東武日光線 新鹿沼駅から徒歩30分
・東北自動車道 鹿沼I.C.から約6km
※東京から2時間程度
●開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
●休館日:月曜日(7月18日をのぞく)
5月6日(金)、6月28日(火)、7月19日(火)、8月12日(金)
●入場料:一般300円、高校・大学生200円、小・中学生100円
こちらの展示会では、日本書票協会所蔵の約300点の蔵書票を中心に、近現代作家が制作した蔵書票を紹介しています。前期と後期で展示替えがあるので、前期をすでに観た方も楽しめそうです。
蔵書票はどうやって作るの?
蔵書票は冒頭で解説したように、本の見返しに貼って所有者を示すことが目的です。そのため、蔵書票には所有者(票主)の名前と”EXLIBRIS”の文字入れをするのが原則となっています。
絵柄やモチーフは、票主の希望に応じて作家が制作することが多いようです。一方、作家が得意とするモチーフで作り、票主の名前を後から入れるタイプも存在します。蔵書票の制作技法のほとんどは版画によるもので、木版画、銅版画、シルクスクリーンなどが用いられます。
蔵書票は現在、自分の本に貼るほか、その芸術性の高さから収集して楽しむ人も多いようです。海外では国際コンペティションがさかんに開催されているとのことで、蔵書票の人気の高さがうかがえますね。
木版画家 川上澄生について
今回の展示作品の多くを占める作者の川上澄生は、大正から昭和にかけて活躍した創作版画家です。川上氏は横浜で生まれ、東京で育ったあと、1921年に旧制宇都宮中学校(現在の宇都宮高等学校)の英語教師として宇都宮に赴任しました。
昼は英語教師として働いていたので、趣味の詩や木版画に打ち込めるのは仕事が終わった夜の時間だけでした。1922年に第4回日本創作版画協会展で初入選を果たして以降、自身の詩と版画を組み合わせた作品を多く制作し、版画界に大きな反響を呼びました。
人気版画家でありながら教師の仕事も続けてきた川上氏は、戦時体制が強まる中1942年に教師の仕事を自主退職します。1949年までの8年間は版画家として活動していましたが、教え子の要望によって1949年から1958年まで教壇に戻ることとなりました。
63歳で教職を退いた川上氏は、版画家として活動を続け、1972年に77歳でこの世を去りました。
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鹿沼市立川上澄生美術館で開催中の「書物を彩る蔵書票」展と、蔵書票の作りや歴史、そして展示会の主要作品を占める創作版画家の川上澄生氏の紹介をしました
「書物を彩る蔵書票」展の開催地は、東京から約2時間で行けるので、休日のお出かけにぴったりですね。色鮮やかで宝石のような蔵書票を、ぜひご覧ください。
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